表現豊かにピアノを弾きたい…!
クラシック曲を弾くのであれば、作曲者がどんな気持ちで作ったのかを考えながら弾いてみましょう。たとえば、ベートーヴェンが難聴を発症した時期に書いたピアノソナタ第8番「悲愴」。当時ベートーヴェンは「この運命に打ち勝つ」という意思を友人宛の手紙にしたため、苦悩に立ち向かう決意をしています。その思いに寄り添うように演奏すれば、自ずとその曲に合った表現ができるようになります。
音符通りに弾こうとすると、表現豊かな演奏からは少し遠ざかってしまうかもしれません。音符はあくまでも記号の1つなので、その曲のイメージを大切に弾いてみましょう。
以前、私の生徒さんで「いとまきまき いとまきまき」の歌詞でお馴染みの「いとまきのうた」をバタバタと弾いたことがありました。すかさず「それじゃあ糸が絡まっているよね」と言うと、スムーズに弾けるようになったのです。また、ある生徒さんが行進曲を弾いている時、行進している感じが伝わってこなかったので「行進はどこから来てどこへ向かう?」と聞くと、そのイメージが湧いたようで、行進曲らしく弾けるようになりました。「そこは小さく」「そこはアクセントで大きめに」と音楽的な指示を出すのではなく、イメージをすることで自然と表現力はついてきます。
イメージ力をつけるトレーニングは、小さい頃からやった方がいいかもしれません。お子さん向けのピアノの本には、イラストが入っているものもたくさんあります。イラストでイメージを分かりやすくするというのも1つの方法ではないでしょうか。ピアノ導入教材のベストセラーとして知られる『バーナム ピアノ・テクニック』は、「歩こう走ろう」「スキップしよう」といったような曲が並んでいて、どのように弾けば良いのかが想像しやすいので、自然と表現力が身につきます。
教えてくれたのは・・・広田圭美先生
東京藝術大学作曲科卒業。2008年にヴィブラフォンとピアノのユニット“タマトミカ”でメジャー・デビュー。作曲/アレンジ/ピアノ担当。2012年よりピアノとパーカッションのユニット“227”で活動。TBSラジオ『ナイツのちゃきちゃき大放送』など番組音楽担当。現在、舞台音楽、CM作曲、アレンジャーとしての活動のほか、庄野真代、大橋純子、日野美歌、鈴華ゆう子(和楽器バンドボーカル)などのサポート・ピアニストとして、ライブやレコーディングに参加。